本記事では、村上春樹著「アフターダーク」を、ネタバレ無しであらすじや感想、レビューを紹介していきます。
まずは一言、この夜が終わらないでほしいと思いました。
雰囲気がとても素敵で、温かい。
村上春樹作品で最も明るい終わり方をするように感じました。
あらすじ
ある日寝てから目を覚まさない姉のエリと同じ屋根の下で眠るのが怖い妹のマリが、真夜中の街でラブホテルのマネージャーのカオルと出会い、成長して娼婦を助ける。社会の闇に触れながら成長していく一晩の物語。
魅力
温かい
主人公マリはクールな人物で、あまり微笑むことはないのですが、真夜中の街で出会う登場人物がみんな温かく、マリの心がだんだん温かくなっていくような一晩の物語が素敵でした。
特に温かくて優しいのが、トロンボーン演奏者の「高橋」。
クールなマリとのやり取りに心を奪われました。
夜の街の雰囲気がいい
文章を読んでいるうちに、自然と夜の街の情景が頭に浮かび、自分もそこにいるかのような気分になりました。
しっとりとした夜に温かい飲み物などを飲みながら読んでいると、じんわりと心に沁みます。
終わり方が明るい
村上春樹作品の中で最も明るい終わり方をするのではないかな、と個人的に思います。
超ハッピーエンド!
好きなセリフ
人間ゆうのは、記憶を燃料にして生きていくものなんやないかな
Amazonのレビュー
正直、ページがなくなるにつれ、終わってほしくない気持ちが強くなりました。もっとこの人たちに会っていたい。
Amazon
すごくリアルなのに夢のような不思議な感覚も混じってくるお話。
一晩の出来事で、時間ごと、視点違いで小さなまとまりが交互に展開されていくのでテンポ良く読める。
会話が読んでいていいなと思う。自分も言葉を発するときにこんな風にできたらなと思うところがある。
内容はあえて考察しないけれど、読後感がとてもいいし、村上春樹の世界を楽しめる作品だと思う。そんなに長くないので気分転換におすすめ。
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習作、というのではないけれど、いろいろ書き方・進め方を試してみたり、これまでのやり方を再構築したり、そんな印象を受けた。
ベテラン投手がさらに新球を会得したような感じ。面白かった、感動した、ということはなかったのだが、何かがじわじわと浸み込んできた。
登場人物の一人、高橋が言う。
「二つの世界を隔てる壁なんてものは、実際には存在しないかもしれないぞって。」
「僕ら自身の中にあっち側がすでにこっそりと忍び込んできているのに、そのことに気づいていないだけなのかもしれない。」
もしかすると、繋がりなんて実際には存在しない、ぷっつり切れているのに気づいていない、そんなこともあるかもしれない、などと思う。二元論で切り分けて相手に肉体的/精神的暴力を加えるというのも恐ろしいが、何かが滲んできて、ふと気づくと終わりの見えない不安やいつ暴発するかわからない狂気に包まれている、というのはもっと恐ろしい。
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感想
夜が明けるにつれてマリの心の温かくなっていくような物語が心にじわりと沁みました。
村上春樹作品の中では比較的マイナーな作品かと思いますが、面白いのでぜひ読んでみてください。
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